五十肩?脱臼?炎症?肩が挙がらない理由
こんにちは、四條畷市のはる整骨院の藤川です。
今日は肩の症状を訴えておられた患者様を例に、スタッフでカンファレンスした症例をご紹介いたします。
私の好きなTV番組にNHKの総合診療医ドクターGという番組があります。
これは実際にあった症例をもとに、VTRに登場する患者の訴える症状から研修医が病名を当てるという番組なのですが、診断力を鍛えるのに非常に参考になるのでできるだけ欠かさず観るようにしています。
ドクターGには及びもしませんが、問診の大切さを改めて感じたケースをご紹介させていただきます。
今回の症例は『肩が挙がらない』
はる整骨院へ受診前に、他院で『肩が亜脱臼している』、また別の院で『五十肩の一歩手前で肩が炎症を起こしている』と言われた方が、実は重大な見落としをされていたケースです。
五十肩でも肩は挙がりませんし、脱臼してても挙がりません。
ケガをしたり痛めたりして炎症を起こしていても肩は挙がりませんが、実は他にも肩が挙がらなく理由というのはあるのです。
今回の症例では以下のような3つがポイントでした。
実際に私たちがどうお話を聞き、どのように分析し、どのような検査をして傷病名を決定するかの参考になれば幸いです。
痛みがとても強かったので他院で見てもらったところ、『肩が亜脱臼している』と言われて三角巾で腕を吊るし安静にしているよう指示され帰宅。
その晩、痛みがさらに強くなったのでまた別の院に行ったところ、『五十肩の一歩手前で肩が炎症を起こしている』と言われアイシングとテーピングをしてもらいました。
少しづつ肘は動かせるようになったものの肩は動きにくく、痛みは変わらないと訴えてはる整骨院へ来院されました。
A このあたりです。
どうやら痛い場所は肩関節ではなく、腕の外側のようです。
Q 他に痛いところはありますか?
A 肩の後ろあたりが痛いです。
指さしたところは肩甲骨の内側の上あたり。
なるほど、ここもこの患者様にとっては肩のようです。
Q 右肩は痛くて動かせないのですか?
A いいえ、力が入らない感じです。
Q 首は回せますか?
A 右に回したら右肩(右肩甲骨の内側)に響きます。
Q ちょっと右手を失礼しますね。
私は座っている患者様の右腕を持ちあげ、患者様の右の掌を患者様の頭の上に触れさせました。
Q これでもう一度首を右に回してください。
A あ、痛くありません。
これで痛みと肩が挙がらない原因は判明しました。
私が出した答えは『右C5神経根障害で右C4/5間の頚椎椎間板ヘルニアの疑い』
いくつかポイントがあったので挙げてみましょう。
『棚の上に右手を伸ばしてホットプレートを下そうとしたとき右肩に強い痛みが走り、右肩と右肘が動かなくなりました。』
この時、肩を挙げた=肩が痛くなった原因と考えてしまうと間違った答えにミスリードされてしまいます。
肩を挙げて肩が痛くなったと、それだけを聞いたら肩の障害と考えてしまうのは当然ですもんね。
施術者にとって重要なのは、その場面を想像する力です。
普通上のものを取る時は、肩を挙げると同時に上を見るために首を後ろへ反らせているはずです。
後ほどこれが右C5神経根障害で右C4/5間の頚椎椎間板ヘルニアの疑いとなる原因だったのです。
患者さんはその場面を正しく表現できるわけではないので、施術者が想像力を働かせて、足りないエピソードのディテールを補い症状の見逃しの確率を下げなければなりません。
患者さんが痛いと言っているところを実際に手で触ってもらうと、患部は施術者が思っている場所とは異なる場合が多々あります。
私たちが肩と理解している場所と、患者さんが肩と思っている場所には開きがあるからです。
この方にとっては”上腕の上の方の外側”や”肩甲骨の上内側”も”肩”だったのです。
実際に痛いところは肩関節ではなく上腕の上外側だったり肩甲骨の内側だったりするわけですから、肩関節以外の原因も視野に入れた問診の進め方をしなくてはなりません。
肩関節の障害でも上腕の上外側に疼痛が出現することがありますが、上腕の上外側はデルマトームと呼ばれる神経支配の皮膚節のC5領域であることは見逃せません。
頚椎5番目の神経が障害されると上腕の上外側が痛くなるという、人体の神経の地図が頭に入っていなければ気づくことはないでしょう。
当たり前ですが、患者さんは医学的知識があまり無いことが多いので、痛い場所を正しく表現できているかは施術者が確認をして、正しく判断することが大切です。
施術者にとって大事なことの2つ目は、思い込みで問診を進めないということです。
私がこの患者様にお話を聞いたときはすでに肩も肘も動かせていたので、推測でしかありませんが、立っているときに腕が下に下がっている状態で、肩が挙がらず肘を曲げることができなかったが正しい状態ではなかったかと私は考えています。
どういうことかというと、例えば肘を伸ばす方向には肘に力を入れることができ、脇を締める方向には肩に力を入れることができる状態であった可能性が高いということです。
これは肩を挙げるための筋肉(三角筋)と肘を曲げるための筋肉(上腕二頭筋)はC5の支配で、肘を伸ばす・脇を締めるのは共にC7の支配なので、上記の上腕の上外側の痛み、C5領域の皮膚節と一致します。
結果として、神経障害が首の何番目かを推察する徒手筋力テスト(MMT)を測ったところ、右の三角筋と上腕二頭筋でそれぞれ4-と4+という結果が出ました。
患者さんは肩がどう動かせなかったのかまでは、ふつうはわかりません。
もし初診でこの徒手筋力テストを行っていたら、もっと早くに原因が特定できたかもしれません。
施術者にとって大切なことの3つ目は、ちゃんと検査を行うということです。
皆さんのお話を聞いている目の前の私たちの頭の中では、想像力を働かせながら内科的な病気を含めた様々な疾患の可能性を思い浮かべ、フル回転させながらも聞くべきことを聞き、行うべき検査を行い、最短距離ではなく見逃しのない精度の高い問診を心がけています。
治療しているのになかなか良くならない症状をお持ちの方も、もしかしたら違う原因があるかもしれません。
症状にお悩みの方、一度はる整骨院へお越しください。
今日は肩の症状を訴えておられた患者様を例に、スタッフでカンファレンスした症例をご紹介いたします。
私の好きなTV番組にNHKの総合診療医ドクターGという番組があります。
これは実際にあった症例をもとに、VTRに登場する患者の訴える症状から研修医が病名を当てるという番組なのですが、診断力を鍛えるのに非常に参考になるのでできるだけ欠かさず観るようにしています。
ドクターGには及びもしませんが、問診の大切さを改めて感じたケースをご紹介させていただきます。
今回の症例は『肩が挙がらない』
はる整骨院へ受診前に、他院で『肩が亜脱臼している』、また別の院で『五十肩の一歩手前で肩が炎症を起こしている』と言われた方が、実は重大な見落としをされていたケースです。
五十肩でも肩は挙がりませんし、脱臼してても挙がりません。
ケガをしたり痛めたりして炎症を起こしていても肩は挙がりませんが、実は他にも肩が挙がらなく理由というのはあるのです。
今回の症例では以下のような3つがポイントでした。
- 施術者の想像する力
- 思い込みで問診を進めない
- ちゃんと検査をする
実際に私たちがどうお話を聞き、どのように分析し、どのような検査をして傷病名を決定するかの参考になれば幸いです。
主訴:肩が挙がらない
40代男性の患者様で、棚の上に右手を伸ばしてホットプレートを下そうとしたとき右肩に強い痛みが走り、右肩と右肘が動かなくなりました。痛みがとても強かったので他院で見てもらったところ、『肩が亜脱臼している』と言われて三角巾で腕を吊るし安静にしているよう指示され帰宅。
その晩、痛みがさらに強くなったのでまた別の院に行ったところ、『五十肩の一歩手前で肩が炎症を起こしている』と言われアイシングとテーピングをしてもらいました。
少しづつ肘は動かせるようになったものの肩は動きにくく、痛みは変わらないと訴えてはる整骨院へ来院されました。
話をちゃんと聞いてちゃんと検査するとすぐに判明
Q 右肩のどのあたりが痛いですか?A このあたりです。
どうやら痛い場所は肩関節ではなく、腕の外側のようです。
Q 他に痛いところはありますか?
A 肩の後ろあたりが痛いです。
指さしたところは肩甲骨の内側の上あたり。
なるほど、ここもこの患者様にとっては肩のようです。
Q 右肩は痛くて動かせないのですか?
A いいえ、力が入らない感じです。
Q 首は回せますか?
A 右に回したら右肩(右肩甲骨の内側)に響きます。
Q ちょっと右手を失礼しますね。
私は座っている患者様の右腕を持ちあげ、患者様の右の掌を患者様の頭の上に触れさせました。
Q これでもう一度首を右に回してください。
A あ、痛くありません。
これで痛みと肩が挙がらない原因は判明しました。
私が出した答えは『右C5神経根障害で右C4/5間の頚椎椎間板ヘルニアの疑い』
問診の本質とは何か?
今回の症状は決して難しい症例では無かったのですが、なぜ私が疑う症状と他院で言われた症状が異なるのでしょうか。いくつかポイントがあったので挙げてみましょう。
- 肩を挙げて物を取る時に発症した
- 右肩が痛い
- 右肩と右肘が動かない
1 肩を挙げて物を取る時に発症
この方は痛みが出た原因を以下のように説明されていました。『棚の上に右手を伸ばしてホットプレートを下そうとしたとき右肩に強い痛みが走り、右肩と右肘が動かなくなりました。』
この時、肩を挙げた=肩が痛くなった原因と考えてしまうと間違った答えにミスリードされてしまいます。
肩を挙げて肩が痛くなったと、それだけを聞いたら肩の障害と考えてしまうのは当然ですもんね。
施術者にとって重要なのは、その場面を想像する力です。
普通上のものを取る時は、肩を挙げると同時に上を見るために首を後ろへ反らせているはずです。
後ほどこれが右C5神経根障害で右C4/5間の頚椎椎間板ヘルニアの疑いとなる原因だったのです。
患者さんはその場面を正しく表現できるわけではないので、施術者が想像力を働かせて、足りないエピソードのディテールを補い症状の見逃しの確率を下げなければなりません。
2 右肩が痛い
この方が実際に痛かったのは”肩関節”ではなく、”上腕の上の方の外側”でした。患者さんが痛いと言っているところを実際に手で触ってもらうと、患部は施術者が思っている場所とは異なる場合が多々あります。
私たちが肩と理解している場所と、患者さんが肩と思っている場所には開きがあるからです。
この方にとっては”上腕の上の方の外側”や”肩甲骨の上内側”も”肩”だったのです。
実際に痛いところは肩関節ではなく上腕の上外側だったり肩甲骨の内側だったりするわけですから、肩関節以外の原因も視野に入れた問診の進め方をしなくてはなりません。
肩関節の障害でも上腕の上外側に疼痛が出現することがありますが、上腕の上外側はデルマトームと呼ばれる神経支配の皮膚節のC5領域であることは見逃せません。
頚椎5番目の神経が障害されると上腕の上外側が痛くなるという、人体の神経の地図が頭に入っていなければ気づくことはないでしょう。
当たり前ですが、患者さんは医学的知識があまり無いことが多いので、痛い場所を正しく表現できているかは施術者が確認をして、正しく判断することが大切です。
施術者にとって大事なことの2つ目は、思い込みで問診を進めないということです。
3 右肩と右肘が動かない
発症直後、この患者様は右肩と右肘が動かせなかったと言われていました。私がこの患者様にお話を聞いたときはすでに肩も肘も動かせていたので、推測でしかありませんが、立っているときに腕が下に下がっている状態で、肩が挙がらず肘を曲げることができなかったが正しい状態ではなかったかと私は考えています。
どういうことかというと、例えば肘を伸ばす方向には肘に力を入れることができ、脇を締める方向には肩に力を入れることができる状態であった可能性が高いということです。
これは肩を挙げるための筋肉(三角筋)と肘を曲げるための筋肉(上腕二頭筋)はC5の支配で、肘を伸ばす・脇を締めるのは共にC7の支配なので、上記の上腕の上外側の痛み、C5領域の皮膚節と一致します。
結果として、神経障害が首の何番目かを推察する徒手筋力テスト(MMT)を測ったところ、右の三角筋と上腕二頭筋でそれぞれ4-と4+という結果が出ました。
患者さんは肩がどう動かせなかったのかまでは、ふつうはわかりません。
もし初診でこの徒手筋力テストを行っていたら、もっと早くに原因が特定できたかもしれません。
施術者にとって大切なことの3つ目は、ちゃんと検査を行うということです。
まとめ
日々、いろんな患者さんが症状を訴えてはる整骨院にいらっしゃいます。皆さんのお話を聞いている目の前の私たちの頭の中では、想像力を働かせながら内科的な病気を含めた様々な疾患の可能性を思い浮かべ、フル回転させながらも聞くべきことを聞き、行うべき検査を行い、最短距離ではなく見逃しのない精度の高い問診を心がけています。
治療しているのになかなか良くならない症状をお持ちの方も、もしかしたら違う原因があるかもしれません。
症状にお悩みの方、一度はる整骨院へお越しください。
高い技術力が評価され、はる整骨院の施術がDVD化されています
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